いちばん星の独占権



はじめの頃は俺に書かせていた名前も、次第にほのかちゃんが書いてくれるようになった。


“三上成哉” とほのかちゃんの、ほのかちゃんらしい几帳面な字でカードに書き込まれていくのを見ると、こそばゆい気持ちになる。




りっちゃん目当てで通うようになった保健室だったけれど、ほのかちゃんとふたりきりで過ごすことの方が多かった。


本来の目的とはちがうはずなのに、全然嫌な気はしなくて、つうか、むしろ。





────楽しかったんだよな。




戸惑うばかりだったほのかちゃんが、次第に俺が来ることに慣れて、いつの間にか当たり前になって。


佐野や島坂さんが来たときにだけ見せる無邪気な笑顔も、時が経つにつれて、俺の前でも見せてくれるようになって。




ほのかちゃんについて知ることも、ほのかちゃんと話すことも、純粋に、心の底から楽しかった。


それは、りっちゃんと過ごす時には決して感じることのない気持ちだった。





『ほのかちゃんがいるから、かもね』





保健室を訪れる理由。
あれは、あながち嘘じゃない。


残された半分の理由は、間違いなく────。






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