いちばん星の独占権
りっちゃんのいない保健室。
手持ち無沙汰な俺は、いつのまにか、ぼーっとほのかちゃんの姿を見つめていることが増えた。
ほのかちゃんはよく、保健だよりやら何やら、委員の仕事をひとりで黙々と取り組んでいる。
ぼんやりとその姿を見つめているうちに、ぴんと伸びた背筋とか、ペンの持ち方が綺麗なこととか、困ったときには眉がぎゅーって寄ることとか、でも、どんなときでも真摯でまっすぐに瞳をきらめかせていることとか。
そういうひとつひとつに気づいて、次第に目が離せなくなる。
知らず知らずのうちに、ほのかちゃんの輪郭を覚えていた。
────最初に、やばい、って思ったのはいつだったかな。
ああそうか、あのときか。
『なるちかくんは、りっちゃん先生が、好き?』
りっちゃんが婚約したと知ったとき。
また俺はどうしようもないやるせなさに襲われて、暗い闇にずるずると引きずり込まれそうになっていた。
息もできない絶望に近い感情、でもそれをりっちゃんにぶつけることもできず、ただただ必死で押し殺していたら。
ほのかちゃんのその声が届いて、あのときは本気で驚いた。