いちばん星の独占権



いつ、気づいたんだろう。
どうやって、気づいたんだろう。



誰にも知られることのないまま、ひとりぼっちで抱えて、それでいつか消えていく日を待つしかないと思っていた。


気づかれることのないまま、伝えることもないまま。


……最初から、まるで存在しなかったかのように、消してしまうしかないと。





────『もしも、なるちかくんがりっちゃん先生への恋を終わらせちゃっても、いつか忘れちゃっても、わたしがちゃんと覚えておく。なるちかくんの分まで、覚えておく、なかったことになんてしないっ!』





どこにも行き場のない思いも、この苦しさも、どうにか自分で処理しないと、と思っていた。



まさか、他の誰かに知ってもらうことで、他の誰かに重い荷物に手を貸してもらうことで、こんなに楽になれるなんて知らなかった。





『なかったことになんて、ぜったい、しない』

『だって、なるちかくんの、大切な気持ちだから』





たった、それだけの、ちっぽけな言葉が俺にとってどれだけ衝撃だったか、きっと彼女は知る由もない。



あの瞬間、あまりの眩しさにチカチカ目眩がして、それが終わる頃には視界が大きく開けていた。




りっちゃんを軸にぐるぐると永遠に同じ軌道で回っていた世界が、目まぐるしく変わっていく。






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