いちばん星の独占権
『あ?』
『ほのか? って、三上くんどこ行く……っ』
戸惑う佐野と島坂さんを横目に、ほのかちゃんの後を追いかけた。
そのときには既に、ほのかちゃんの後ろ姿は人混みに溶けてしまっていたけれど。
ほのかちゃんって、まじで、そういうところある。
慎重に見えてけっこう言動が大胆で、そこが、いいんだけど、いいんだけど、かなり危なっかしい。
目を離すとすぐに何かに巻き込まれてそうで……なんて考えながらほのかちゃんを探すべくきょろきょろと視線を動かす、と。
『……っ』
何かを思うより先に、ああこれか、って納得した。
ほのかちゃんの様子がさっきからやたらおかしかった理由はこれだったのか。
浴衣を着ていつもより数段めかしこんだりっちゃんと、その隣を歩く大人びた男。
どこから見てもお似合いのカップルが歩いていた。
りっちゃんは嬉しそうに頬をゆるゆる緩めながら、何かを楽しそうに耳打ちしていて、りっちゃんの彼氏であろうその人も穏やかに頷いている。
────『なるちかくん、動いたら、ぜったいだめだよ?』
ほのかちゃんの必死の形相を思い出して、ふ、と口の端に笑みがこぼれた。
ほんと、あの子、どんだけ優しいんだよ。
俺が幸せそうなふたりを見なくてすむように、俺がこれ以上傷つかなくていいように。
お人好しにも程がある。
それであの挙動不審な行動だったのか、と合点がいくと、余計面白い。
全部、あれは俺のためだったのか。
守ろうとしてくれていたのか。