いちばん星の独占権
ふは、と思わず声を上げて笑う。
そこで気づいた。
少し前の俺ならきっと、りっちゃんがデートしている場面になんて遭遇したら、相当落ちてたはずなのに、あれ、今、全然平気じゃん。
あれだけ雁字がらめにされて、しんどかったのに、いつのまにか、とっくに過去の話になっていたんだと知る。
“幸せそうでよかった” なんて、りっちゃんに対して、一生思えないと思っていたのに、今驚くほどあっさりそう思えている自分がいた。
それが、誰のおかげかなんて、そんなの────。
考えなくても、わかる。
りっちゃんに背を向けて、駆け出した。
無数の人がどっと流れる通りのなかで、探していた後ろ姿は、びっくりするくらい簡単に見つかった。
迷いなく、視線が吸い寄せられる。
思えば、これは今日が初めてじゃない。
いつからか、学校にいる時も、ふと視界に彼女が現れると、その子のことばかりを見ていた。
遠くからでもはっきりとわかる、たくさんの人影のなかで、たったひとつだけ光り輝く後ろ姿。
見間違うことのないシルエット、浴衣姿の彼女に話しかける男どもの姿が見えて。
は? とジリジリ焦げていく。
何話しかけてんの、触ってんの、勝手に。
その子は────。
なんて、さっき、りっちゃんの彼氏には思わなかった感情を、こんなにもあっさり引き出されて、もう自覚するしかなかった。
『見つけた』
ここが夜の空だとしたら、きみは、いちばん星。
真っ暗闇にぽつりときみが現れて、そうすれば、俺は、何よりも真っ先にきみを指さすだろう。
────きみに、強烈に、惹かれている。