いちばん星の独占権


今度は俺が面食らっているうちに、ほのかちゃんはなにやらごそごそと巾着袋のなかを漁っている。




「なるちかくん、足、見せて」

「え」


「ちゃんと消毒しなきゃですので」

「マジ?」




ほのかちゃんが得意気に見せてくれるのは、ハンディサイズの消毒液のボトルと、コットン、それから絆創膏。


やたら本格的な救急セットだった。




「だって、わたし、保健委員だもん」

「くはっ、さすが」


「役に立ててよかったー」

「はは。じゃあ、お願いします」


「了解であります」




保健室にいるときから、何度もほのかちゃんが保健の先生の代わりに応急処置にあたるところを見かけてきたけれど────主に佐野に対しての、な。



ほのかちゃんの手つきって、めちゃくちゃ丁寧。

手当てされる側のこっちが、くすぐったくなるくらい、消毒液がしみたコットンをあてる力加減も、絆創膏を貼ってくれるのも。



どんな小さい切り傷でも、絶対見逃さないのな。




ほのかちゃんは、自分に取り柄がないとか、そういうことを言っていたけれど────俺は、ほのかちゃんのこういうところは、他の誰にもない、とくべつだと思う。





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