いちばん星の独占権
結局、なるちかくんに敵うはずもなく、大人しく腕のなかに収まることになる。
抱え方にも足取りにも、不安なところは少しもなくて、安心して身を任せていられるけれど、恥ずかしいものは恥ずかしい。
こらえきれず、手のひらで顔を覆うと。
「ふは、なに、照れてんの?」
「は、恥ずかしいの……」
「かーわいー」
う、わ。
このひと、息するみたいに “かわいい” って言うからやだ。
星祭りのときだって……。
『めちゃくちゃ、かわいい』
なるちかくんは、もっと、自分が放つ言葉の威力を自覚したほうがいいと思う、ぜったい。
狙ってなくとも、撃ち抜かれちゃうんだって、わかったほうがいい。
「大丈夫?」
保健室に無事、到着。
奥の、仕切りのカーテンをシャッと開けて、なるちかくんがゆっくりとわたしの体をベッドの上に下ろしてくれた。
とすん、と背中からシーツに沈む。
相変わらずお腹は痛いけれど、横になると、さっきよりは少し楽。
なるちかくんの腕は、わたしをベッドにきちんと横たえるまで、ずっと、びっくりするくらい優しかった。