いちばん星の独占権



「三上ー?」



毛布ごしに、石岡先生の声。

少しでも身じろぎすれば、まちがいなく見つかってしまう。



こんな絶対絶命のピンチなんて、はじめて。

ふつうに生活してて、こんなことってない。




さっきまでとは全く別の動悸がおそってくる。

全身が心臓になったみたいにバクバクしていて、冷や汗もたらたら。



ともかく必死に息をひそめて身を固くしていると。




「 ( だいじょうぶ ) 」




目の前でなるちかくんの唇が動いて、口パク。



どのあたりが大丈夫なのか、まったくわからないけれど────でも、何の根拠もないのに、安心できてしまう。



なるちかくんといると、ドキドキと同じくらい、ほっとするの、ほんとうに不思議。





「なんだー? いないのかー?」





拍子ぬけたような声。

石岡先生の足音が少しずつ遠ざかっていく。




ばれないくらいのキョリになったとわかると、張りつめていた息をふーっと吐き出した。





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