いちばん星の独占権
……だけど。
きゅむ、と瞼をしっかり閉じた。
眠ったふり、いいかもしれない、名案だ。
これ以上、至近距離でなるちかくんを直視していたら、おかしくなっちゃうところだったから。
目を閉じて、たぬき寝入りを決め込むことにする。
視界から入ってくる情報が減るだけで、ちょっとはドキドキも落ちつくかも……。
しばらくして、保健室から石岡先生の気配が完全になくなった。
最後に聞こえたのは 『佐野じゃあるまいし、こんなところで三上がサボるわけないか』と独りごちる声だった。
さすがはなるちかくん、信頼されてるなぁ。
……ほんもののなるちかくんは、ここでばっちりサボってますけどね。
「ほのかちゃん、もう動いても大丈夫────って、もう、寝てる?」
「……」
「……寝てんのか」
寝たふりをすることに決めた手前、下手に起きあがるわけにもいかず、じっと目を閉じたままにしてみる。
そのうち、なるちかくんも保健室を出ていくと、そう思って。