いちばん星の独占権
「ほのかちゃーん」
静かな声で囁くように、なるちかくんがわたしを呼ぶ。
つん、と頬に何かがふれる感覚。
たぶん、なるちかくんの指先。
つん、つん、と数回繰り返される、こそばゆい感覚に無反応をつらぬく。
「ふは、マジで寝てんじゃん」
なるちかくんの独りごちる声に、笑ってしまいそうになって、必死でこらえた。
いつも、なるちかくんの方が数段、どころか、ずっと上手だから。
わたしばっかり振り回されている気がするから。
こんなにあっさり騙されるなるちかくんは、なんだか、新鮮で、おもしろい、かも。
「……あー、なんでこの状況で寝れんだろーな」
呆れたような声に、『寝てないよ』って心のなかだけで返事する。
今、ぱっちり目を開けたら、なるちかくん、びっくりするかな。
でも今更 『起きてました』って言うのも、なんか、違うような……。