いちばん星の独占権
「いいから、もっとちゃんと掴まれば」
自転車を漕ぐりんくんが、顔だけでわたしを振りかえった。
そう、今、わたしはりんくんの自転車のうしろに乗っている。
ほんとうは、二人乗りは、だめなんだけど……。
────というのも。
『ほのか、帰んぞ』
どこから聞きつけたのか、わたしが体調不良で休んでいると知ったりんくんが、無遠慮に保健室に乗りこんできたのが、数十分ほど前のこと。
『え、帰るって……?』
『腹いてーんだろ、家まで送る』
『送る……』
わたしは電車通学だし、りんくんもだ。
お互い学校からびみょうなキョリのところに家があるわけで────。
『チャリ、あんだよ』
『えっ、そうなの?』
『乗せてく』
それは、初耳だ。
りんくん、学校に自転車置いてたの……?
いつの間に。
そういうことなら、と心が傾く。
自転車で、なら、家までもそんなに時間はかからない。