いちばん星の独占権
思い立ったが吉日。
なるちかくんが置き忘れたプリントの束を抱えて、保健室を後にする。
保健室は、校舎の変なところにある。
だから人通りも少ないのだけれど、職員室にたどり着くためには、教室の並ぶフロアを通る必要があって。
ひとたび保健室を離れると、同じ学校とはいえ別世界。
昼休みの廊下って、こんなににぎやかなんだ……と改めて思う。
わいわいがやがやとした廊下をかき分けて進む。
女の子も男の子もたくさんいて、それでも────。
「っ、なるちかくん」
どうして、こんなにすぐ、見つけてしまうんだろう。
もう職員室までプリントを届けて、ちょうど戻ってきたところなのかも。
なるちかくんは廊下の端っこで、たくさんのひとたちに囲まれていた。
こうしてみると、遠いなあ、と思う。
6等星だったころのわたしを思い出してしまう。
────そういえば最近は、自分のことを “6等星” だって卑下することが少なくなった。
それは、なるちかくんが、いつでも “わたし” を見て、話しかけてくれるから。
……それでも、やっぱり、遠いのには変わりはないのかもしれない。
改めてみれば、なるちかくんとわたしが、あの保健室でふたりきりで過ごすことなんて、奇跡みたいなもの。