いちばん星の独占権
りんくんがまた、ぴくりと眉を動かした。
「はあ? 権利? なんだそれ」
「なるちかくんには、ずっと、大切に想っているひとがいるんだよ? わたしはそれを応援するって、なるちかくんに言ったんだもん、そんなの、そんなの、どうしようもない……っ」
すきなひとにはすきなひとがいる。
たったそれだけの半直線が、途方もない。
世の中には恋に悩むひとがたくさんいて、神頼みしてまでも恋をかなえたいっていうひとがたくさんいて、それは知っていたけれど、それがこんな切実な気持ちだったなんて、知らなかった。
「正直、俺は三上とかどーでもいいっつの」
「っ、え」
「お前が三上の事情をあれこれ考えて、引いたとして、じゃあお前のその気持ちはどこに行くんだよ」
ここは廊下。
まわりにはたくさんひとがいて。
だからりんくんもわたしも声をひそめている。
けれど、荒らげてもいないりんくんの声が、ずんと重く響いた。