いちばん星の独占権


「てか、珍しいね」

「うん?」

「髪、三つ編み」



空いた片手で、なるちかくんがわたしの髪をつかまえる。

三つ編みに結わえた、その毛先を軽く持ち上げた。


その何気ない仕草にどきり、としつつ。



「そうなの、今日暑くて……さすがに我慢できないなって」

「いつもは下ろしてるしな、たしかに、首のうしろ暑そう」




そのとおり。

夏の暑さっていうのは人間に容赦ない。



炎天下、じりじりと焼きつけられて、ジトッとした汗で髪の毛がまとわりつくのが気持ちわるくて。




今日は久しぶりにおさげにしてみた。

────けど、なるちかくんに気づいてもらえるなんて思ってなかった。



それならもうちょっと凝ったかわいいやつにしてくればよかったかも……。

今さらちょっぴり後悔する。



「あ、あの、なるちかくんっ?」

「んー?」



んー、じゃない。

離してほしいのだ。



いくら髪だからといって、掴まれたままだと、心臓が騒がしくって仕方ない。

なるちかくんといると、わたしは、どんどん心臓を使い果たして短命になっていく。





< 257 / 315 >

この作品をシェア

pagetop