いちばん星の独占権


「ほのかちゃんって、夏休みは何してる?」

「ええ……? なんだろう、りんくんとれーちゃんと、課題したり、海に行ったり、テーマパークとか……?」


「ふーん」




ふーん……?

なるちかくんから聞いてきたわりに、返事がてきとうだ。


興味、なかったかな。

と、なんだか少し落ちこんでしまう。




「佐野とふたりで遊んだりする?」

「りんくん? ええと、うーん、それなりに?」


「ふーん」




また、ふーん、だ。


りんくんとふたりで、よりはれーちゃんも合わせて3人のほうが確率的には高いけれど、でもふたりでってこともないわけじゃない。




「映画観たり、りんくんの家におじゃましたり……? あとは、気になってたカフェに、付き合ってもらったり、とかかな」

「……」



あれ、今度は無言。

しん、と急に静かになってわたしだけが勝手に焦る。



キュッキュと上履きが擦れる音だけがやけに響いて。

どうしよう、とまた一段焦りが跳ね上がったとき。




「ほのかちゃんって、テーマパーク、好き?」

「あ、うん……、絶叫系はちょっと苦手、だけど、雰囲気が楽しくて」


「風船とか買ってそう」

「っ、なんでわかったの?」




ちょっと恥ずかしい。

高校生にもなって、テーマパークで風船をうきうき買ってしまうなんてどうなんだ。




「ふは、さすがにそろそろほのかちゃんのこと、わかってきた」


「にしてもわかりすぎだよ……」

「……見てるからかな」



小さく呟いたなるちかくん。

そして。




「じゃあさ、俺と────」




何か言いかけたなるちかくん。

ちょうどそのとき、保健室にたどりついて。



ガラガラッと扉をあけると、なるちかくんがなにか続けるはずだった言葉は途切れてしまった。




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