いちばん星の独占権



ズビズビ、と鼻をすすりながらりっちゃん先生はホットタオルを目元に押し当てた。


あたたかい濡れタオルは、肩こりや疲れ目、それからこうして泣き腫らしてしまったときに、いいの。




「ごめんねえ、こんなところをお見せして……」





しばらくして、気持ちが落ち着いてきたのか、りっちゃん先生は申し訳なさそうに頭を下げた。


そんなりっちゃん先生に、なるちかくんはあたたかい飲み物を入れたマグカップを手渡していた。



そして、わたしはふるふると首を横にふる。





「たまには、悲しいことだって、落ちこんじゃうことだって、あると思うから」

「でも、私、もういい大人なのに……」


「関係ないですっ」


「大人だからって泣いたらだめってことはないだろ」





なるちかくんも同調する。


りっちゃん先生はなるちかくんから受け取ったマグカップに口をつけて「あったかいねえ」としみじみ呟いた。







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