いちばん星の独占権
「……喧嘩、しちゃったんだ」
左薬指に輝くダイヤをじっと見つめて、りっちゃん先生はぽつりと語りはじめた。
「あんまり、うまくいってなかったの、最近。マリッジブルーなのかな、これがそうなのか……わからないけどね、お互い、仕事のことと自分のことで精いっぱいで、そこにプラス結婚のための……ってなってくると、てんてこまいになってしまったのね」
前もちょっと愚痴っちゃったけど、大変なのね、いろいろ準備が、あって。
そう口にしながら、するり、と。
りっちゃん先生の可憐な指先が、指輪をなぞった。
「私のせいなんだ、きっと。先に限界がきたのは、私だったの。わーっとなって、むしゃくしゃしちゃって……余裕がなくなると、優しくできなくなる、そういうことって、職業柄わかってたはずだったのに、それでも、だめだった。最初にトゲトゲした言葉を投げつけてしまったのは私の方なんだ」
でも、と言葉をつなげていく。
「あたりまえだけど、彼だっていっぱいいっぱいで、そうなるともう売り言葉に買い言葉でしょ? 私がひどいことを言った分、彼からもひどい言葉を浴びせられて、私、彼がそんなことを言う人だって思ってなかったから、びっくりしちゃって」
はー……とりっちゃん先生の薄くひらいた唇から、らしくないため息がこぼれ落ちた。