いちばん星の独占権
「うん、今。なるくんってずーっと子どもってイメージだったから、びっくりしちゃった。私の膝までくらいしか背がなくて、いつもちょこまかうしろをついてきてた」
「膝までは言いすぎ」
「ふふ、うん。困っちゃうなー、なるくんが、私よりも立派な大人にしか見えなくて、困るよ」
りっちゃん先生は、また、くるりと指輪をまわした。
ダイヤが蛍光灯のしろいひかりを反射して、キラリとひかる。
「いきなり金髪に染めてきたときは、ああまだまだヤンチャ盛りなのかなって心配してたのにな。なるくんが、こんな私よりずっと大人びたこと言えるなんて知らなかったよ」
くす、とりっちゃん先生が笑う。
その吐息の先で、りっちゃん先生はほろり、と呟いた。
「……あーあ、なるくんが彼氏だったらな」
きっと、ただの独白にすぎない。
思いがけずこぼれ落ちただけのひとことに、わたしの耳はぴくりと反応した。
今、なんて……。
心臓がドクン、といやに騒ぐ。
「あ、ごめんね! 雰囲気わるくしちゃった! ちょっと私っ、外の空気すってくるね! なるくんにほのかちゃん、聞いてくれてありがとう、ちょっとすっきりしたっ」
ガタンッと勢いよく立ち上がったりっちゃん先生は、そのままぱたぱたと小走りに保健室を去っていく。
花柄のスカートが、誘惑するみたく、ひらめいて、消えた。