いちばん星の独占権
◇
涙のうすい膜の向こう、ぼんやりと宙を見つめる。
どれだけのあいだ、そうしていたのだろう。
ほんの数秒だったかもしれないし、もしかすると数時間経っていたかもしれない。
「おい、ほのか、いつまでそんなとこで────っは、なに、泣いて……」
ようやく、はっと我に返ったのは。
「なんで泣いてんだよ」
「……う、あ、りんくん……っ」
「────ちょっとお! りんたろ、早くほのかのこと呼んでよっ、私お腹空いたんだから!はやく帰りたいのっ!」
とつぜん、保健室に突入してきたりんくんの声。
後を追うようにぱたぱたと響く、れーちゃんの足音と、いつも通りの明るい声。
いつでもわたしの味方でいてくれる、毛布のようなふたりの声をきくと、油断して、またぼろぼろと涙が溢れてきた。
りんくんはそれを見て、眉にするどくシワを刻んだ。