いちばん星の独占権





涙のうすい膜の向こう、ぼんやりと宙を見つめる。


どれだけのあいだ、そうしていたのだろう。

ほんの数秒だったかもしれないし、もしかすると数時間経っていたかもしれない。





「おい、ほのか、いつまでそんなとこで────っは、なに、泣いて……」





ようやく、はっと我に返ったのは。




「なんで泣いてんだよ」

「……う、あ、りんくん……っ」



「────ちょっとお! りんたろ、早くほのかのこと呼んでよっ、私お腹空いたんだから!はやく帰りたいのっ!」




とつぜん、保健室に突入してきたりんくんの声。

後を追うようにぱたぱたと響く、れーちゃんの足音と、いつも通りの明るい声。




いつでもわたしの味方でいてくれる、毛布のようなふたりの声をきくと、油断して、またぼろぼろと涙が溢れてきた。




りんくんはそれを見て、眉にするどくシワを刻んだ。







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