いちばん星の独占権


ぜえぜえ、と荒い吐息の音。

そこに混じる、その声は、ここにいるはずのないひとのもの。



振り向くことが、一気にこわくなった。

それでも、わたしは、その声を待っていたような気がする。




「っ、なるちか、くん……!」




なんで、どうして。



疑問符が頭のなかを飛び交って、だけど、唯一無二の金色が視界に入れば、そんなものぜんぶどうでもよくなってしまう。



肩で息をしながら、なるちかくんはわたしの腕を引いた。


汗ばんだ感触、あつい体温。




「お取り込み中悪いけど、ほのかちゃん借りてく」




有無を言わさず。

なるちかくんがわたしを立ち上がらせる。




「なんっ、待っ、なるちかくん……っ」

「話はあとで」




えええ。

目を白黒させつつ、なるちかくんに半ば無理やり連行される。



そんなわたしを。

れーちゃんは菩薩のような顔でひらひらと手を振って、それからりんくんは。




「……三上。泣かせたら殺す、つか、後で一発殴らせろ」

「ちょっ、物騒なこと言わないでよっ」



物騒なことを言ってれーちゃんにたしなめられつつ、仏頂面で見送ってくれた。



< 287 / 315 >

この作品をシェア

pagetop