いちばん星の独占権



空の色が、夕焼け色から藍色へと東のほうから染まっていく。


そうして見上げた空に、ぽつんとひとつ、現れるひかり。




「「あ」」




なんの偶然か、ふたりの声がちょうど重なった。

どうぞ、となるちかくんが先をゆずってくれるから。




「なるちかくんの星だなって」





西の空に浮かぶ明るい星をまっすぐ指さした。




夕暮れどき、空を見上げて、誰もが真っ先に指をさす、いちばん星────正確には金星。



わたしのなかでは、これはなるちかくんの星なの。



わたしの言葉になるちかくんは、おどろいたように目を丸くした。それから。





「ほのかちゃんの星だ、って言おうとしてた」





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