いちばん星の独占権
たとえばここが夜の空だとして。
夕暮れどき、空を見上げて誰もが真っ先に指をさす、いちばん星のようなひと。
それがなるちかくん。
それならわたしは、空高く昇っても誰にも気づかれずにそっと宵闇に溶けている6等星でまちがいない。
これは、謙遜ではなくて、ほんとうにそうなの。
あまりにもかけ離れている。
言葉を交わすこともなく、そうしたいと願うこともなくて、平行線はずっと平行のまま卒業までそうしていくのだと、てっきり思っていた。
たまに見かけるなるちかくんの金髪を、今日も眩しいなあと目を細めるだけの日々がこれからもずっと続いていくのだと。
そんな、なるちかくんとはじめて話したのは。
なるちかくんが、はじめて保健室を訪れたのは、昨年のこの時期────夏のはじまりの季節だった。
『どなた、ですか……?』
昼休み。
一年前も今とまったく変わりなく、保健室でユーレイ委員のみんなに代わって当番をしていたわたし。
たしか、あのときは、れーちゃん……仲良しの島坂 玲奈ちゃんとりんくんも一緒にいたと思う。
ふたりが保健室を訪れるのはよくあることだもん。
────ともかく、ノックもなしにとつぜん保健室の扉がガラガラッと開いたから、びっくりして振り向いて。
そこに立っていた人物に、またびっくりした。