いちばん星の独占権
「チッ、最悪」
りんくんが舌打ちして、さっと物陰に身を隠す。
扉の方を見れば。
「石岡先生……?」
「おー、枢木。佐野見なかったか?」
石岡先生は、日本史の先生、かつ生徒指導の先生。
いざというときには頼れる熱い先生だけれど、その代わり、いかんせん厳しいことで有名だ。
言い逃れなんて絶対無理。
反省文を書き終わるまでみっちりありがたいお説教90分コース。
そんなわけで、ついたあだ名は「石頭」。
「りん────佐野くんは、ええと」
どう答えようか、ここにいるんだけどな。
迷っていると、物陰から「なんとかしろ」とりんくんが口パクで訴えてくる。
なんとかしろ、って言われましても。
どうせりんくんが、不真面目だし、喧嘩ばっかりしているから、自業自得なのに。
石岡先生に怒られるのも、当然の報いだ。
思い当たることが多すぎる。
もう、ほんとに、もしわたしが怒られることになったら、ちゃんと責任とってよ?
「佐野くんは……見てません」
「ほんとか? 保健室に向かったって聞いたが」
うっ、と言葉につまる。
見られてるじゃん、りんくん。
ドウシヨウ……と石岡先生を前にしどろもどろでいると。
「見てませんよ、俺も。佐野は保健室には来てないです」
「三上もいたのか。そうか、三上が言うならそうなんだろうな」