いちばん星の独占権



ふたりとも、何もかもここに置きっぱなしにして、午後の授業はどうするつもりなの。


あとでぜったい文句を言わせてもらおう、と心に誓いつつ、筆記用具はペンケースに、教科書類は積み重ねてひとまとめにしていく。



「手伝うよ」



隣からひょいとなるちかくんの腕が伸びてきた。




「えっ!? いいよ、そんなの……っ」

「ほのかちゃんひとりじゃ、その量ぜったい重いだろ」

「そんなことないっ、これくらいひとりで……」




なるちかくんの力を借りるなんて申し訳ないもん。

まとめた教科書を、ええい、と抱えると。




「……っ、わっ!」




思いのほかの重量感に、ぐらりと体が傾ぐ。

なんとか踏みとどまったけれど、その拍子に抱えた教科書の山が雪崩のように崩れていく。



ああっ、せっかくまとめたのに……と、床に向かってすべり落ちていこうとするそれらをスローモーションのように眺めていると。




「ほら、言ったそばから」




落下して一大事になる前に、器用にキャッチしてくれた。

なるちかくんは呆れたように笑っている。



な、情けない……。





「ありがとう……」





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