いちばん星の独占権



向かう先はもちろん、れーちゃんとりんくんの教室。

とりあえず昼休みが終わるまでに、この荷物を届けないと……。




保健室から教室までは少し距離がある。
とことこと歩いているうちに、沈黙が気まずくなってきて。



なにか、話題、話題、話題といえば……。





「そういえば、りっちゃん先生、結局戻ってこなかったね?」




今日は水曜日。

それはりっちゃん先生が来る日でもあって、今日も、もちろん来ていたのだけれど……。



昼休みがはじまってすぐに、職員室に呼ばれて保健室を出ていったりっちゃん先生は、その後帰ってこなかった。



そういうことはままあるから、珍しいことではないんだけれど……とそこまで考えてハッとする。




「……!」




りっちゃん先生、のワードになるちかくんがぴくりと反応していた。



そうだ、そうだった。


うっかりしていたけれど、なるちかくんは、りっちゃん先生のことを────。




慌てて手にしたノートで口元、もとい顔ごと覆い隠すけれど、もう遅い。

あああ、どうしよう……。





「ははっ、ほのかちゃん全部顔に出てる、バレバレ」





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