いちばん星の独占権



「うっ、ごめんなさい、わざとじゃなくて……」




自分の無神経さに、ほとほとあきれる。



りっちゃん先生の話題はだめだった。

なるちかくんにだけはぜったいだめだったのに。




「いいよ、気にしなくて」

「いやいや……」

「どーせ、失恋してるんだし」





まただ。

なるちかくんの横顔がくしゃっと一瞬、ほんの一瞬歪む。




切なげで、苦しげで、胸がきゅっとなるような……。

そんなわけがないのに、なるちかくんが泣いているように見えるの。




────それに、なるちかくんの口からはっきり聞いたのは、これがはじめて。

この前は、わたしがたずねて、それになるちかくんが『秘密ね』って言っただけだったもん。




でも、今は、ちゃんと、『失恋』って。





「あの、そんな大事な気持ち、わたしが知っちゃってよかったの?」




好き、って大事な気持ちでしょ。



結果的に、なるちかくんのりっちゃん先生への恋の矢印を、りっちゃん先生が知るより先に知ってしまったけれど────それでほんとによかったのかな。



なんだか、申し訳ないというか……。





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