いちばん星の独占権
「苦しい、よね」
ふっと沈黙がおちる。
廊下のリノリウム、ふたり分の足音だけがやけに響く。
そうこうしているうちに、プリントの束をそれぞれの教室に配り終わった。
ほんとうは、何往復かするつもりだったのだけれど、なるちかくんが手伝ってくれたおかげで、これで終わり。
「ほのかちゃん、帰りは?」
荷物をまとめて、下駄箱へ向かうと、なるちかくんがなぜか律儀に待ってくれていた。
てっきり先に帰ったのかと。
「ええと、電車……」
「ん、じゃ、一緒に帰ろ」
「えっ」
「イヤだった?」
「イヤっ、とかじゃなくて……! なるちかくんも電車通学なの?」
「そんな感じ」
そんな感じ……?
あいまいな返事に首を傾げるけれど、なるちかくんが有無を言わさない様子で手招きするから。
あわててローファーに履き替えて、なるちかくんの背中を追った。