いちばん星の独占権



慌てて首をぶんぶん横にふる。
そうじゃない、そうじゃないの。




「好きじゃないし、好きにもならない……っ、絶対に! なる────その人だって、わたしのことを好きになんて、絶対ならないです」




だから、困ってる。


申し訳ないの、そんなつもりが少しもないのに、お情けだけで星祭りに一緒に行ってもらう、なんて。




「ほのかちゃん、ポラリスってわかる?」

「……? ええと、北極星……ですよね」

「そう! 正解です」




ぴょんと脈絡もなく、話題が変わる。

りっちゃん先生が「いいですか」と、授業をすすめる先生のようにぴん、と人差し指を立てた。



要点だから、よく聞きなさい、テストに出ますよ、の合図。世界史の先生がよくやるポーズの真似だ。


保健室、とつぜん始まる謎の授業にひたすら戸惑っていると。





「ポラリス────北極星は、こぐま座のアルファ星。天球の北極とほとんど同じ位置にある星です」




りっちゃん先生の指先が、保健室の白い天井の真ん中に向かって伸びる。




「そのため、地球からは動かない星に見えるのね。ほかの星たちが、このポラリスを中心にぐーるぐーる回っているように見えるの。動かない星だから、昔から、ずっと方角を探す目印にされてきた」



こくりと頷く。





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