いちばん星の独占権
「でもね、ほのかちゃん」
「……? はい」
「ポラリスはずっと北極星でいられるわけじゃないの。少しずつ、少しずつ、その場所がずれていくの。次に北極星になるのは、こと座のベガだって言われているのね、そうやって、変わっていくの」
「知らなかった……」
「でしょっ? そうなの、太古から揺るぎなく動かない星だと信じられてきて、だからみんな船旅の目印にしてきたのにね」
ふふ、と笑ったりっちゃん先生。
今度はそのきれいな指先がわたしの方をまっすぐ向く。
「だからね、ほのかちゃん、“絶対” なんてないんですよ。ほのかちゃんがそのひとを好きになる可能性も、そのひとがほのかちゃんのことを好きになる可能性も、ゼロなんて言いきれないと思うの」
「……っ」
「だからね、好きにしてみたらいいの、若いんだし! 相手に好きなひとがいるから一緒にいちゃだめ、なんて決まりはない、そうでしょ? ていうか、そういうの羨ましいなーっ! 私はもう婚約しちゃったから、そういうのはフリンになっちゃうからねっ」
心のあたりが、軽くなって────それから、重たくなった。
りっちゃん先生の言うことはもっともかもしれなくて、でも、それをりっちゃん先生が言ったということに、ちくり、とする。
ちくちく、痛い。
「あの、りっちゃん先生って、なる────三上くんと」
「んん?」
きょとんと首を傾げたりっちゃん先生。
その仕草にハッとする。