炎のボレロ
同窓会での出来事
学校の仕事が終わり、
美咲は真人と一緒に
同窓会に行くことになった。
同窓会の会場は、喫茶店と
スナックを兼ねている。
お店のママの枝光奈津子は、
美咲とは幼なじみで親友だ。
そして、お店をするまでは
看護師をしていた。
「いらっしゃい、
みんな待っていたのよ」
「奈津子、みんな集まったんだな」
「そうよ、ほとんど全員集まったわ。
幹事を引き受けるのも大変だったわ。
お店の宣伝になるから好都合だわ」
「だけど、奈津子の頑張りで
切り盛りしているじゃない。
私は、奈津子の頑張りで
元気になれるんだから」
「ありがとう、
そう言ってくれるのは
幼なじみだからよね。
美咲だって、
養護教諭になってから
頑張っているじゃない。
私は、美咲の頑張りには
脱帽しているのよ。
人より倍は働いているんだから」
「ありがとう、私が好きで
やっていることだから
苦にはならないわ。
奈津子、これからも
お互いに頑張りましょうね」
幼なじみは、
よくわかってくれている。
美咲にとって奈津子は、
何でも励ましてくれる存在だ。
瑠衣子とも仲がいいが、
奈津子とは特別に話ができる間柄だ。
ほんの小さなことでも
本音で話せる唯一の親友だ。
それだからこそ、
美咲にとって奈津子は
励みになる親友であった。
「さぁ、真人と美咲が来たから
乾杯しましょう」
「奈津子、瑠衣子は?」
「瑠衣子は、仕事が遅くなるから
先に始めていてって」
奈津子はそう言うと、
みんなにグラスを配っていた。
「ハーイ!今日は、
楽しく過ごしましょうね。
ただし、車で来ている人は、
お酒はご遠慮ください。
警察がうるさいからね。
羽目を外さないで
楽しくやりましょう。
それじゃ、カンパーイ!」
みんなが、それぞれに
乾杯をしていた。
「乾杯、義姉さん」
「乾杯、真人さん」
お互いの心が、何かを
見つけるように
お互いを求めていた。
「二人とも、いいムード
出ているわね。
真人、瑠衣子が見たら
ヤキモチをやくわよ」
「よせよ、義姉さんの前で
恥ずかしいじゃないか」
「いつまでも、シスコンだと
嫌われるわよ」
「瑠衣子は、大切にしているよ。
義姉さんの親友だからね」
そう言うが、真人は
心に引っかかっていた。
それは、最近瑠衣子と
うまくいってないからだ。
それよりも、自分に
優しく接してくれる
美咲に真人は思いを
寄せるようになったのだ。
自分の兄の妻であるのに、
兄ばかりか自分も優しくしてくれる
美咲に恋をしているのが
わかったのは、兄と結婚した時だった。
だけど、義姉と義弟の
関係をこえてはいけないのだと
瑠衣子との結婚を決めたのだ。
「遅くなっちゃった」
「遅かったわね、瑠衣子。
仕事、忙しいの?」
「うん、毎日残業じゃ
体が持たないわ」
「お酒、何を飲む?」
「ジンフィズ、つくって。
美咲は、何を飲んでいるの?」
「美咲は、真人と同じ
マルガリータを飲んでいる」
「いつも、真人と同じ
カクテルを飲むのよね。
まるで美咲と真人が恋人みたい」
「ヤキモチ、やかないの。
あんたが彼女なんだから、
堂々としていなさいよ。
それに美咲は、
真人の義姉さんだから
義弟の心配しているのよ。
もう少し、長い目で
見てやりなさいよ」
奈津子はそう言うが、
瑠衣子の美咲への嫉妬は
強くなるばかりだった。
「瑠衣子、久しぶり」
「美咲、久しぶり」
瑠衣子は、笑顔をつくって
美咲にあいさつをしていた。
「真人さん、瑠衣子と
一緒に飲んだら?
あたしは、
気にしなくていいから」
「義姉さん、悪いけど
オレ向こうで飲んでいるから」
そう言うと真人は、
同級生の中に入って飲み始めた。
突然のことなので驚いた
美咲と奈津子に、瑠衣子は言った。
「私たち、最近うまくいってないの。
仕事が忙しくて時間が取れないから、
彼怒っているの」
真人さんと瑠衣子が
うまくいっていない!?
信じられないけど、事実らしかった。
「真人さん、学校のバスケの大会で
ピリピリしていたのよ。
瑠衣子、許してあげてね」
「いいのよ、美咲のせいじゃないから」
「だけどさ、男って女が仕事をして
いることを理解しないなんて、
今時ナンセンスじゃない?
今は、女も社会に出て
仕事をしているんだから」
「同じ仕事をしている
美咲がうらやましいわ。
きっと、旦那様が
理解のある人なのね」
美咲が、養護教諭の他に
カウンセリングの仕事もしていると
邦雄とのお見合いで話をしたら、
結婚しても続けてほしいと
言ってくれたのだ。
だから、今こうして
仕事ができるのも
邦雄の理解があるからだ。
邦雄には、感謝している。
今は、幸せでいっぱいだった。
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