炎のボレロ
日曜日の昼下がり
同窓会の次の日のこと、
この日は日曜日だった。
朝から部屋の片づけをしたり、
手作りケーキをつくって
ティータイムを過ごしていた。
そんな時だった。
玄関のチャイムが鳴ったのは…。
美咲が玄関を開けると
真人が来ていたのだ。
「こんにちは、義姉さん。兄貴、いる?」
「いるわよ、ちょっと待ってて。
あなた、真人さんよ」
「おうっ、どうした?
デートをしていたんじゃなかったのか?」
「ドタキャンされた。
毎度のことだけど、
今度ばかりは頭にきた。
兄貴、相談があるんだけど
聞いてくれないかな?」
「借金ならお断りだぞ。
まぁ、とにかく上がれ。
話、聞いてやるから」
邦雄に促されて真人は、
家に入ってきた。
そして、応接間に真人を通した。
「どうした?
何か、悩みでもあるのか?」
「オレのことより、仕事を
優先するのについていけなく
なったんだ。まったく、
理解ができないよ」
「おまえは、寂しがり屋だったから
そばにいてほしんだろう?
だけどな、結婚するんだったら
彼女のことを理解しないと
ダメじゃないか?」
「そういうもんかな?」
真人は、タバコを
取り出して火をつけた。
「どうぞ」
美咲が、紅茶とケーキを持って
応接室に入ってきた。
「義姉さんは、いいよな。
兄貴が仕事を理解して、
家庭を両立しているんだから」
「オレは、美咲の仕事に
感動をして続けろって言ったんだ。
男というのは、妻の仕事を
理解するのが大切なんだぞ」
「真人さん、瑠衣子は
今の仕事が面白くてしかたがないのよ。
あなたが初めて担任した時と同じよ」
「まぁ、オレの時は
バスケの顧問をさせて
もらってうれしかったよ。
初めて担任という大きな仕事を
任されて緊張したな」
真人はそう言うと、
タバコに火をつけていた。
「真人、タバコは良くないぞ。
オレもそれを吸うが、
おまえは吸いすぎているぞ。
体のためにも気をつけろよ」
「まぁ、そうだな。
15で非行に走った時に
タバコを吸ったのが
おやじに見つかって、
そんなものを吸うなんて
絶対に許さんって怒鳴られたな。
いろんな迷惑をかけて、
おやじが必ず警察に来たよな」
「おまえは、それだけ父さんに
かわいがられていたんだよ」
「そうだな、末っ子のオレには甘くて
バスケしかできないから体育の教師に
なりたいって言ったら、おやじは
生徒の痛みを理解してやる教師に
なれって励ましてくれた。
それだけおやじは、オレの理解者に
なっていたんだよな」
美咲は、一人っ子だったから
兄弟がいるのがうらやましかった。
こうして、兄弟が仲良くしているのを
見ると、ほほえましく感じるのだ。
「そろそろ、夕食の時間だな。
真人、メシを食っていくか?」
「もちろん、遠慮なくゴチになるよ」
そして美咲は、夕食の支度を始めた。
今夜は、真人の好物をつくってあげた。
「お待たせ、お夕飯できたわよ」
「今夜はなんだ?」
「ビーフシチューとシーフードサラダよ」
「なんだ、それは真人の好物じゃないか。
たまには、オレの好物をつくってくれよ。
どっちが亭主かわからないだろう?」
「あらっ、あなた。
ヤキモチ、やいているの?」
「まぁ、しかし弟の真人のことまで
気を配ってくれて感謝しているよ。
おまえにとって、真人は
高校の同級生であり、
職場の同僚でもあるからな」
「兄貴、正直に言えよ。
弟に嫁さんを取られたくないって」
「何を言うんだ。
しかし、オレたち夫婦が
どうなるかわからないが、
オレは美咲を必ず幸せにするよ」
こうして兄弟が仲良くしているが、
美咲はこの先二人が自分をめぐって
憎しみあう関係になろうとは、
この時は考えもしなかった。
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