一途な彼は真面目で純粋で歳下で。《完結》
「あ!逃げたっ!!」
「あら、本当。そんなんじゃいつまで経ってもフリーのまんまだぞ〜。それに折角のコーヒーが冷めちゃうよ〜?」
そんな言葉が背後から聞こえたが、聞こえないフリをして庶務課を離れた。
資料室に向かう途中で、外回りに出ようとしている彼の姿を見つけた。
彼の横顔は無表情で少し怖い。
そんな彼の周りを取り囲むように女性陣がピッタリと張り付いていて、営業先に向かわなきゃいけないのに足止めされている。
でもきっと彼女達もこういう移動している時にしか声を掛けるチャンスがないのだろう。
イケメンだと色々大変そうだなと苦笑いを浮かべ、何かしら声を掛けて助けるべきか迷っているとふとこちらに視線を向けた彼と目が合う。
すると途端に柔らかい表情になり、嬉しそうに微笑んだ。
『紗江さん。』
そう言って彼が私の名前を呼ぶと、周りに貼り付いていた女性陣は一斉にこちらに視線を向ける。
睨みつけられるのを覚悟していると、何故だか焦ったように散り散りに離れていく女性陣。
「、、え?」
そんな行動に驚いていると、彼が手招きをする。
その手招きに戸惑いながら彼の方に向かった。