一途な彼は真面目で純粋で歳下で。《完結》


という事は必ず一度会社に戻る筈だ。


もし会社に戻ってきてもまた何処かに仕事へ行くようなら、次の日の予定を聞けばいい。







そう思って彼を待ち続けた。

薄暗かった外は完全に真っ黒になって、本降りな雨まで降ってきてしまった。



折り畳み傘は持っているものの、打ち付けるような雨に少し不安になりながら彼を待っていると1時間を経過した所で彼の姿を見つけ思わず駆け出した。












「片瀬くんっ、、!」

『、、紗江さん?何故こんな時間に、、?』





待ち続けた彼に会えて喜んだ私とは正反対に、彼は私を見つけると怪訝な表情を浮かべた。

その表情に胸がズキりと痛む。








胸の痛みを抑えながらも必死に彼に声を掛ける。




「そ、外回りお疲れ様です。あの片瀬くん、この後何か予定とかある?」

『、、予定ですか?何故そんな事を聞くんですか?』

「その、、っこの前部屋まで運んでくれたお礼がしたくて!もし良かったらうちにご飯食べに来ない?片瀬くんの好きなもの、いっぱい作るよ!!」

「、、それは紗江さんのアパートにですか?」

「うん、そうだよ?」






俯き気味の彼の表情は見えないが、心なしかいつもよりも声は暗い。


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