一途な彼は真面目で純粋で歳下で。《完結》
一度本音を漏らすとタカが外れたように感情が高ぶってしまい、声を上げてしまう。
そんな〝らしくない私〟に驚きの表情を見せた彼だったが、直ぐに切ない表情を浮かべて呟いた。
『、、紗江さんには完敗です。元々隠し通す事なんて無理な話だったんです。』
「え、、?」
『今夜、時間を取って頂けますか?俺の親の事、全て話します。』
そう言って俯いてしまった彼に慌てて手を伸ばす。
その手を取って握り返してくれた彼の手は、少しだけ震えていた。
「本当に嫌なら無理強いはしたくない!本当にいいの?無理、、してない?」
『正直、、怖いです。でもこんな俺を紗江さんが知りたいと思ってくれたので、打ち明ける決心がつきました。今日は取引先と会食が入ってますので、アパートで待っていて下さい。会食後に迎えに参ります。』
真剣な瞳で見つめられ、手の震えもいつのまにか止まっていた。
「うん、、待ってるね。でも仕事終わりに考えが変わったら連絡して?暁人くんが話してくれる時までずっと待ってるから。」
『いいえ。先延ばしにすればするほど、きっと言えなくなります。、、紗江さんが勇気をくれたんです。この機を逃したくありません。、、、それでは、また夜に。』
そう言うと握っていた手に一度優しく力を入れてから離れていってしまった。
、、本当に良かったんだろうか。
やっぱり無理強いしてしまったんじゃないかと、落ち込みながら部署へと向かう。
庶務課にたどり着くとふいに営業課の方に視線を向ける。
ガラス越しに見えた彼は、先程とは打って変わって凛とした姿で仕事に打ち込んでいた。
彼のそんな姿に思わず見惚れる。
知りたいと言ったのは私なんだから、そんな私がこんなんじゃ駄目だと頬を強めに叩きパソコンに向かって仕事を始めたのだった。