一途な彼は真面目で純粋で歳下で。《完結》
『どうされましたか?もしかして、、酔いましたか?それなら何処かに停まって少し休みましょうか?』
いつだったかもこんな事があった。
勘違いさせて、心配させて、、その時は恥ずかしくて本音を隠して彼の優しさに甘えてしまった。
でも今度はちゃんと気持ちを口にする。
「、、ううん。運転する暁人くんの横顔がカッコ良かったから触れたくなったの。運転の邪魔にならないようにするから、、このままでもいい、、?」
彼を見つめて言葉を掛けると、真っ赤になりながらも服を掴んでいた私の手をハンドルを持っていない方の左手で繋いでくれた。
『邪魔な訳ありません。紗江さん不足で仕事も集中できずに散々な1週間でした。随分と紗江さんに触れてなくて俺の方が触れたかったんですから、服じゃなくて出来ればこっちを握って下さい。その方が俺が嬉しいです。』
握られた手は大きくて温かくて触れているのは手だけなのに、彼から全身で包み込まれるような温もりにゆっくりと深く鼓動が高鳴る。
「我儘を聞いてくれてありがと。」
『こちらこそ、ありがとうございます。』
彼との過ごす柔らかな空間が心地いい。
そして繋がれた手に視線を向けると満たされる。
きっと彼よりも私の方が彼に触れたかった。
私の方が彼が不足していたんだと思い知った。