一途な彼は真面目で純粋で歳下で。《完結》
青春を部活に注いだ事もあり運動神経だけは自信のあった私だったが、氷の上だと上手くバランスが取れずに何度も転びそうになってしまう。
一方彼は初めてとは思えない見事な滑りを見せて、周りの人の視線を惹きつけていた。
彼はそんな視線には気付かず、直ぐに転びそうになってしまう私の手を取り腰を支えて優雅に氷の上を滑っていく。
女子からの羨望な眼差しが痛かったが、彼は楽しそうに笑ってくれてその笑顔を見ているとそんな視線も気にならなくなっていく。
時間も忘れて長い時間滑り続けた。
スケート場を出る頃には外は薄暗くなっていて、さすがに日が落ちると肌寒く感じる。
夕飯を何処で食べようかと悩んでいると、彼が素早く携帯で近くの店を検索してくれそこへと向かった。
たどり着いたのはお洒落な居酒屋で、中へ入ると個室になっている。
普段彼と食事へ行く時にはあまり利用しない個室にドキドキしながらも、他の女性からの彼への視線がない空間に久しぶりにゆっくりと食事を楽しめた。
もしかしたら、彼は外食の度に私がヤキモキしている事に気づいていたのかもしれない。