一途な彼は真面目で純粋で歳下で。《完結》
独り言を呟きながらリビングへ向かって来た彼だったが、ソファーに無言で座る私に気が付いた。
声を掛けても応答がない私に彼がゆっくりと近づいてくる。
音も光もない真っ暗な空間に私の心音だけが激しく響く。
『紗江さん?』
ソファーへと辿り着いた彼が存在を確かめるように優しく私の肩に触れる。
それだけで肩が勢いよく跳ね上がる。
少しずつ暗闇に目が慣れて来たのか、未だに無言のままの私に今度は少し心配そうな表情を浮かべ頬に手を伸ばした彼。
『、、大丈夫ですか?急な暗闇に、さぞ驚かれてたでしょう。怖い思いをさせてしまってすみません。きっと停電だと思います。直ぐに戻るとは思うのですが、、。』
そう言って頬をひと撫ですると、隣に座り肩を引き寄せて抱きしめてくれる。
私が無言なのは暗闇が怖いからだと思っているようで、包み込むように優しく抱きしめられる。
彼の香りに包まれると緊張して心音が慌ただしく動いていたのがゆっくりとしたリズムを刻む。
もうこの人無しでは生きていけない。
そんな事を思う程に。