一途な彼は真面目で純粋で歳下で。《完結》
「っ、、、片瀬君、、?もう就業時刻だよ。」
彼にそう声を掛けるが黙り込んだまま動かない。
すると突然、彼の手が伸びてきて髪に優しく触れるとそのまま更に引き寄せられた。
そんな彼の行動に周りからは悲鳴が聞こえる。
突然の彼の行動に驚いていると、頭の上に彼の大きな手の平が乗せられた。
そしてその手の平を自分の方へとスライドさせた。
すると手の平は彼の鼻くらいの高さで、それを確認すると満足げに小さく呟く。
『、、ようやく俺の方が10センチ以上、高くなりましたね。』
その言葉で、ようやく彼がしていた行動の意味が私には分かった。
何故ならば、彼がまだうちに遊びに来ていた頃は毎年していた行動だったから。
彼が中学に上がった頃から突然始まった、私との背比べ。
身長の低かった彼からすれば、女である私を見上げるのはきっと辛かったんだと思う。
毎年、1年に一度だけこうして背比べをして身長を確認していた彼。
年々、私の目線に近づいていく彼の成長を微笑ましく思っていた。
目線の高さが初めて一緒になったのは、確か彼が高校生の頃。