一途な彼は真面目で純粋で歳下で。《完結》
言いたいことも言えて少しだけスッキリした。
だから今日はこれで彼を解放して帰ろうと背を向けると突然手首を背後から掴まれた。
「な、、に?」
慌てて振り返ると切ない表情で私の手首を掴んでいる彼が小さな声でつぶやく。
『、、紗江さんが嫌でなければ送らせてください。』
「、、いいの?」
『勿論です。紗江さんが嫌でなければですが、、。』
「嫌な訳がないよっ!」
『では荷物を取りに行ってきますので、こちらでお待ち下さい。直ぐに戻ります。』
「ありがと。久しぶりに一緒に帰れて嬉しい。」
今の思いを素直にぶつけると彼は少し顔を赤らめてからペコリと一礼して荷物を取りに走って行った。
素直に思いを伝えた事によって、少しだけ2人の関係が前進したような気がする。
有言実行で数分で戻ってきた彼と並んで車へと向かった。
相変わらず会話はないものの、先程よりも少し近くなった私たちの距離。
車内でも何気ない会話をして久しぶりに会話が弾んだ。
『紗江さん、着きましたよ。部屋に入るまでここで見送りますので。』
あっという間にアパートへと到着してしまい、少し前までは部屋まで送ってくれていた彼だったが、今は車から降りようとはしない。
それに少しの寂しさを覚えた。
私は今まで彼に甘やかされてきたんだ。
これからはそれを少しでも返せたらと、少し強引に彼を引き寄せて触れるだけのキスを落とした。