一途な彼は真面目で純粋で歳下で。《完結》
「え、、?何だって?」
小声で呟く弟の言葉が聞き取れなくて聞き返すが〝何でもない〟と返された。
慎一は少し考え込むような仕草をして辺りを見回した。
「警察には?」
「被害もないのに、警察になんて言えないよ。」
「何があってからじゃ遅いだろ。あいつにまた煩く言われるだろ?」
「大丈夫だってばっ、、!」
「大丈夫じゃねぇよ。姉貴が大丈夫でも俺らが大丈夫じゃねぇから。」
「兎に角、警察には行かないから!!!!」
互いにヒートアップしてきてつい、声が大きくなってしまう。
道のど真ん中で言い合いをしていると、急に慎一の視線が私から私の背後へと移って曇った表情を見せた。
何事かと思い私も振り返る。
慎一の視線の先にはスーツを着た男性。
その男性がこちらへと真っ直ぐ近づいてくる。
「あいつ、、どっかで見た事あるような、、。」
弟の呟きに、もしかしたら慎一の知り合いなのかと男性を凝縮する。
確かに何処かで見た顔だ。
しかも最近。
男性は足を緩める事なく徐々に近づいてきて、私達の前で止まった。
そして口を開いた。
「〝警察〟という言葉が聞こえましたので、声を掛けさせて頂きました。私の独断で動いておりましたので流石に警察に行かれると困るもので。」