一途な彼は真面目で純粋で歳下で。《完結》
表情を歪めながら話す芳川さんは、当時を思い出しているのかとても苦しそうだ。
「私が可愛がれば可愛がる程に、彼女はやつれていって子供とは思えないほど痩せ細っていきました。私の母親から、、満足に食事を与えられなかったようです。愛人の子を可愛がるのが気に入らなかったのでしょう。当時学生だった私にはどうする事も出来なかった。だからこの頃から距離を取り始めました。出来るだけ言葉を交わさず、顔を合わせず過ごしました。その効果か、彼女には3食食事が与えられるようになり痩せ型ではありましたが体に肉も付き初めました。その頃には私も大企業の秘書課へ就職が決まり、彼女と会う機会がめっきり減ってしました。寂しい気持ちもありましたが、彼女の事を思えばきっとこの方が良いのだと思っていました。実際に母親からの彼女への嫌がらせは確実に減っていました。しかし学校では相当なイジメに合っていたそうです。成長するにつれ、彼女はとても綺麗になり、誰しもが目を引く存在となっていました。それもイジメを悪化させたのでしょう。次に私が彼女に会った時には鈴が鳴るように可愛らしく笑う彼女の面影なんて無くなっていてまるで別人のようでした。」
「芳川さんが次に会ったのはどちらで、、?」
「新入社員挨拶の時です。彼女は私と同じ会社の庶務課へと就職していたのです。その当時、社長が会長へと退き、御子息である男性が若くして跡を継いで社長へと就任したばかりでした。私はその新社長の秘書に抜擢されました。」
「まさか、、その社長というのが、、?」
「はい、お察しの通りで暁人さんの父親でもあり片瀬コーポレーション、代表取締役社長です。」