一途な彼は真面目で純粋で歳下で。《完結》
彼は名前を聞いてもピンと来ないらしく、考えこんでしまった。
それもそうか。
彼にとってはもう一生、会うことが無いと思っている相手の名前だ。
思い浮かばなくて当然だろう。
「、、秘書の芳川さん。」
『秘書?何処の企業の秘書ですか?』
「〝片瀬コーポレーション〟、、のだよ。」
その言葉を聞いた瞬間、ダカッと椅子が動く音がして表情を変えた彼がいた。
『何故、、芳川さんが、、、?まかさっ!?あの人の指示でっ!?!?』
「違うよ。芳川さんの独断で私に会いにきてくれたの。その時に色々と聞いたの。」
真剣な表情で彼を見つめると今度は顔面蒼白になり俯くと、消えそうな声で呟いた。
『、、、幻滅されましたか?』
「幻滅なんてしないよ。」
『では、、嫌いになられましたか、、、?』
「暁人君の事を嫌いになったりしない。どうしてそう思うの?」
『ずっと隠して来たんですっ、、!紗江には知られたくなった!!!自分の醜い生い立ちも世界を有する男の跡取りだという立場も!!いつかは、、自由になれると信じて!!!!」
顔を上げた彼は酷く表情を歪ませ叫んだ。
きっと、、ずっと苦しんでいたんだろう。
彼の父親と同様に。