一途な彼は真面目で純粋で歳下で。《完結》
2人のやり取りを見守っていた私だったが、我慢できなくなった涙が静かに流れる。
すると隣の彼がそれに気づき、困ったように笑いながら優しく涙を拭ってくれる。
『俺の父親はとても一途で不器用な人で、俺の母親は真面目で純粋な人だったんですね。』
「じゃあ暁人くんは間違いなくお2人の1人息子だねっ、、!だってそれ、、全部暁人くんと一緒だもの。」
『、、そうなんですか?』
「そうだよ。気づいてないの?」
『自分ではよく分かりません。母はとても真面目な性格だったのは朧げに覚えています。何事にも全力で必死に働く姿は子供心に尊敬していました。体調が悪くとも気丈に振る舞って仕事へ向かい、心配を掛けまいと笑顔でした。父親の事は正直よくわかりません。』
「それは、、これから分かっていけばいいと思うよ?」
『はい、そうですね。』
そう呟いた彼は芳川さんに視線を移し、真剣な表情で尋ねた。
『あの人、父は今どういう状態なんでしょうか?』
「社長は治療を拒否されている状態です。しかし主治医のお話だと手術をすると必ず治る病気だとおっしゃっております。ですから一刻も早く手術をして頂きたいのです。」
『、、分かりました。では近々またあの病院へ行って話をしてきます。自分が言ったからといって手術をするかは分かりませんが、、。』
その言葉を聞くと芳川さんはとても動揺して震える声で呟いた。
「っ、、会いに行ってくださるんですか、、、?」
『行きますよ。〝愛されていた〟と分かりましたから。それも芳川さんと紗江さんのお陰です。芳川さん、長年に亘り父を、、そして母を思い支えて下さってありがとうございます。、、話を聞いた後でも正直、父に会うのは緊張しますが、恩返しをさせていただければありがたいです。時間を作って頂けますか?』
一度頭を下げ、顔を上げた彼の横顔は一回りほど大人な表情をしていて思わず心臓が跳ねた。