一途な彼は真面目で純粋で歳下で。《完結》
だから全部、芳川さんと彼から聞いた話だ。
父親と話をしたその足で私のアパートへと来た彼。
何故か会いに行った彼以上に緊張していて、部屋をずっとウロウロと歩き回っていた。
だからチャイムが鳴った瞬間に玄関へと飛び出してしまった。
勢い良く開けたドアの前にビックリとした表情の彼が居て、彼が口を開くよりも先に声を上げた。
「ど、どうだったっ、、!?」
すると彼は驚いた表情から優しく眉を下げて大きく頷いた。
『和解したんだと思います。しっかりと話はできました。』
「っ、、、よかっ、、たぁ〜っ、、!」
緊張の糸がぷつりと切れて崩れ落ちるようにその場に座りこんだ。
彼はそんな私を抱え上げて部屋まで連れて行ってくれてその日の出来事を話してくれた。
初めて語られた辛く厳しい父親の過去、そんな暗闇から救い出してくれた存在、それを失った絶望や葛藤。
消息を絶っていた愛しい存在と共に突然現れた宝物の存在。
不器用なりに2人を愛していたと。
それらを聞いた彼は自分と似ていると思ったそう。
『、、生まれて初めて父の目を見て会話をしたかもしれません。だから今まで気づく事が出来ませんでした。父はあんなに淋しそうな眼をしていたんだという事に。』
少し後悔したような表情でそう呟いた。