一途な彼は真面目で純粋で歳下で。《完結》
『紗江さん、おはようございます。まだ就業時間前なのに仕事熱心ですね。』
スマートにその手に持っていたコーヒーを私のデスクに置き、笑顔で声を掛けてくる。
そんな彼に対して、これ以上波風を立てたくなくてすぐさま背を向ける。
「おはよう片瀬くん、コーヒーありがとう。、、悪いんだけど今日少し立て込んでるから。ごめんね。」
そう言って冷たくあしらう。
何と返ってくるかドキドキとしながらキーボードを叩くと小さく聞こえた溜息。
『、、そうでしたか。それは大変失礼しました。では紗江さんの邪魔にならないように退散します。』
「うん。片瀬君も営業、頑張って。」
背後から彼の気配が遠のくのが分かって、ホッと胸を撫で下ろす。
案外すんなりと受け入れてくれたなと手を止め後ろを振り返ると、何故か彼も振り返り目が合う。
そして少し離れた所から、大きい声でこちらへと声を掛けた。
『言い忘れましたが、、晩御飯はご馳走でした。久しぶりに紗江さんの手料理が食べられて幸せでした。次はいつお邪魔していいですか?』