一途な彼は真面目で純粋で歳下で。《完結》
私の声がけに一粒涙を零した彼女は、小さく頷き自分の席に着き受話器を握った。
そして彼女は涙をぐっと堪えて一度大きく深呼吸してから番号を押して電話を掛け始めた。
そんな姿にホッと胸を撫で下ろしてから、また次の会社へと電話を掛けた。
電話を掛けながら先程罵声を浴びていた子が気になり様子を伺う。
彼女同様にまだ経験浅く若い営業の男の子。
彼は案の定、どうしていいのか分からずオドオドとしていてそんな姿が心配になる。
あんな風に怒鳴られれば気持ちもナーバスになるし、適切な対処だって分からない筈だ。
それに部署を跨いでのミスなんて心が折れてしまうのも当然かと思う。
実際、こういったミスで会社を退社した営業マンを沢山見てきた。
でもここからが踏ん張りどころでこれを乗り切れば、滅多にする事が出来ない苦い経験と同時に強靭な精神力を身につける事ができる。
昔、真木さんが言っていた。
営業は、努力でいくらだって挽回出来る。
だから楽しいのだと。
営業の部長が不在の今、営業で1番上の上司は課長である真木さんだ。
でも真木さんは他の人には指示は出すものの、ミスを犯した当人には指示を出さない。
きっと何をしなればいけないのかを自分自身で悟って欲しいのだと思う。