一途な彼は真面目で純粋で歳下で。《完結》
私はこんなに意識してしまっているのに、噛んだ張本人である彼はまるで何も無かったかのように自然な表情で運転している。
経験豊富そうな彼には、甘噛みなんて大したことない事なのかもしれないが、私はそうじゃない。
私ばかりが意識させられて、それが何だかモヤモヤしてしまう。
弟のように思ってきた彼に、こんな気持ちにされられる日が来るなんてと指を見つめながら思っていると突然彼から声を掛けられた。
『紗江さん、お腹空きませんか?良かったら軽く何か食べて帰りませんか?』
「えっ、、あ、うん。そうだね。」
『紗江さんもご存知の通り、好き嫌いはありませんので紗江さんが決めて下さい。』
「いいの?じゃあ時間も時間だし、胃に優しいうどんがいいな。」
『うどんですね。分かりました。では次の通り沿いにあるうどん屋に寄りましょう。』
「うん、そうしよう。」
急遽、夜ごはんを食べて帰る事になったが会話をしている間にいつのものように自然と話せるようになっていてホッとした。
そのまま通り沿いのうどん屋に寄ってから、また車に乗り込んでアパートへと向かった。