一途な彼は真面目で純粋で歳下で。《完結》
アパートの通り沿いに車を横付けすると、彼は後部座席に置いてあったバックを取って私の膝の上に差し出した。
『楽しい時間はあっという間でしたね。まだ帰したくはないですが約束でしたので、これは返します。』
「ううん、私こそ送ってもらってごめんね?」
『いえ、前回は最寄駅までしか教えてもらえませんでしたが、今回はお住まいのアパートまで送らせてもらえて嬉しかったです。それに、、少しは意識してもらえたようなので。』
そう言って目を細めた彼の視線が私の指先に向かったのが分かって、ドキッと心臓が高鳴る。
『今日のトラブルも紗江さんが空気を変えたと伺いました。それはもう見惚れるほどにと。紗江さんは仕事でもプライベートでも周りをよく見ていて、いつだって1番先に気付いて行動されます。、、あの時もそうでした。』
「あの時って、、?」
『先程話していた介抱してもらった時です。あの時も熱があることに自分よりも先に気付いてくれました。俺は紗江さんのそんな優しい所が好きでした。でも皆ではなく、俺だけを見て欲しいという想いが年々強くなっていきました。今だって、どうやったら俺だけの事を見つめて考えてくれるか、そして男として意識してもらえるか、、それだけを考えています。』