心がささやいている
そうして、コーヒーを淹れて三人でテーブルを囲んでいる時だった。
「へ?天使ちゃん認定?…ってコラ颯太!何でそーいうこと咲夜ちゃんに言っちゃうんだよっ!」
「えー…。だってホントのことじゃん」
珍しく動揺して椅子から立ち上がり真っ赤になっている辰臣と、責められて口を尖らせている颯太のやり取りに。
『天使ちゃん認定』って何ですか?なんて軽いノリで聞いてしまった己の浅はかさと、この話題は辰臣には振ってはいけないものだったのかと、やってしまった感に咲夜が思わず硬直していると、颯太がすかさずフォローを入れてきた。
「あー、この人照れてるだけだから気にしないで大丈夫。ちなみに『天使ちゃん』っていうのは辰兄が昔出会った『ある女の子』のことで、動物の心が分かっちゃう不思議なコだったんだってさ」
「えっ…?」
動物の心が分かっちゃう不思議な子?
昔、大空さんと…?
「そして、今ランボーと一緒にいられるのは、そのコのお陰なんだってさ。…そうだよな?辰兄?」
「…それって…」
「ううぅー…おのれ颯太…」
顔を真っ赤に染めて、俯いたまま拳をふるふると握り締めている辰臣は、確かに怒っているというよりは羞恥に耐えているような感じだ。
それでも、互いによく分かり合っているのだろう二人からは、険悪さなどは微塵も感じられず、そんなやり取りさえ楽しんでいるように見える。
「別に恥ずかしがることでもないでしょ、そもそも昔の話なんだし。まだ当時ピュアだった辰兄がつけたあだ名みたいなもんだよな」
「ピュアって、お前ね…」
今度は呆れているんだろうか。赤い顔を片手で覆うようにして大きくため息をついた。
「何にしても、感謝…してるんだよな?」
「そりゃあね。可愛いランボーと引き合わせてくれた人だからね」