心がささやいている
「…ってなわけで。天使ちゃんっていうのは、ランボーの気持ちが解る不思議な女の子のことで、その神秘的な存在ゆえに辰兄が『まるで天使のようだった』と言ったことから付けられたあだ名だ。そして、それが月岡だったってことは紛れもない事実なワケだよな。…と、言うことは、だ」
颯太はそこで一旦言葉を区切ると、コホン…とワザとらしく咳払いをした。
「ランボー含む俺たちはそんなお前に感謝こそすれ、その不思議な力を気持ち悪いだなんて思うハズがないってことだ」
「……っ…」

思わぬ言葉に咲夜は目を丸くした。
だが、同時に横で聞いていた辰臣が慌てて声を上げる。

「ちょっ…ちょっと待って、颯太。気持ち悪いって何でっ?どういうことだよ?」
話の流れについていけずにいる辰臣に。
「違うよ、辰兄。気持ち悪いなんて思うワケないって俺は言ったんだ」
「いや、それはそうなんだけど。何でそんな話になるのさ?」
「ああ。辰兄はランボーの気持ちが分かる月岡の能力をどう思う?気持ち悪いなんて思っちゃいないだろ?」
「当たり前だろっ!そんなこと思う訳ないじゃないかっ!」
「うん。だから俺もそう言ってる。けど、月岡本人はそうじゃないみたいなんだよな」

それを聞いた辰臣は「えっ?」と、慌てて咲夜の方を振り返った。
咲夜は初め、大きな瞳を揺らしながら二人の顔を交互に見て戸惑いを隠せない様子であったが、そのうち力なく視線を落とすと、ポツリと呟きを口にした。

「だって、普通じゃない…」
「…咲夜ちゃん?」
「だって、そんなの普通じゃないでしょう?ランボーだけじゃない。他の動物だって…それこそ人の気持ちでさえ分かってしまうような能力なんて。そんなの…。そんな奴、誰だって一緒にいたくないに決まってる…」
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